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福岡高等裁判所 昭和36年(ネ)161号 判決 1961年11月01日

熊本県人吉市青井町三〇八番地

控訴人

野口太

右訴訟代理人弁護士

本田正敏

被控訴人

熊本国税局長

田宮良策

右指定代理人

樋口哲夫

矢野五平

塩川渡

岩崎義朝

右当事者間の審査決定変更請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し、昭和三四年一二月一〇日なした昭和三三年度分控訴人の総所得額を三九一、四〇〇円、所得税額を三七、〇〇〇円とした審査決定は、これを取消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴指定代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述並びに証拠関係は、控訴代理人において当審証人水崎光雄、同本村熊夫の各証言及び控訴本人尋問の結果を援用し、乙第二号証の成立を認め、被控訴指定代理人において、乙第二号証を提出したほか、原判決の事実摘示に記載してあるところと同一であるからこれを引用する。

本件事案の争点は、控訴人において昭和三三年度期首棚卸額すなわち昭和三二年末棚卸額を六三九、五三六円であると主張するのに対し被控訴人においては、これを裏付けるに足る資料がないばかりでなく、該金額は多額に失し不合理であるとし、昭和三二、同三三両年度分の平均差益率によつて算出した四六七、六九〇円が相当であると主張するのである。

そこでこれらの点について当審証拠調べの結果も加味参酌して判断してみるのに、当裁判所も亦次の点を附加するほか、原判決の理由中に説示してあるところと同様、控訴人の本訴請求は失当としてこれを棄却すべきものと判断するので、該理由をここに引用する。

控訴人は、甲第一号証が控訴人の昭和三二年度末棚卸表であつて、該棚卸表によつて控訴人主張の棚卸金額が正当であると主張するのであるが、同表は正規の帳簿に依拠した棚卸表の形式を具備していないので、その信用性は極めて薄弱であることが一見して推認されるばかりでなく、当審証人水崎光雄、同本村熊夫の各証言並びに当審における控訴本人尋問の結果によつても、同号証が正確に作成されたものであるとする心証を惹起し得ない。この点に関する前掲水崎証人の証言並びに控訴本人の供述は、当裁判所の措信しないところで、他にこれを左右するに足る証拠資料はないのみならず、被控訴人が採用した算定方式に関し、これを不合理と目すべき点も発見されない。

従つて控訴人の本件控訴は理由がないので、民事訟訴法第三八四条第一項第八九条を適用して主文のように判決する。

(裁判長裁判官 中園原一 裁判官 厚地政信 裁判官 原田一隆)

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